意識と無意識

以前、アシスタントとして勤めていた美術教室で、
「デッサンを我が子に教えてほしい」
といった声を親御さんから受けているので、
希望者にデッサンを教えてくれないか。と、講師の方から依頼を受けたことがあります。

希望しているお子さん達は、小学校の低学年くらい。

「デッサンは技術的な描写を、段階的に構築、蓄積していくものだから、
低学年のお子さんにはまだ早いと思いますよ。」と答え、あまり乗り気がしませんでした。

しかし、なんやかんや押し切られる形で、教えることになります。

さて、何を使ってデッサンしようか。

木炭を利用したデッサンが、鉛筆より新鮮で楽しめるかな、と考えて、木炭デッサン用の紙と、画材の木炭を用意してもらいました。

それと、木炭デッサンには食パンを使います。

デッサン時に使用される食パンは、消し具としての役割で使用します。

クラスの日、デッサンを行うこども達と、通常の課題を行うこども達とで別れました。いつもと違う雰囲気に、こども達もなんだかそわそわ。

デッサンをするこども達は、「絵の勉強するんだ〜」と、ちょっと誇らしげです。

まずは木炭の芯ぬきを行います。

煙突掃除に使うような、細い針金の先にブラシが付いたものを使い、木炭の中心に通っている芯を取り除いてあげます。

木炭なので、当然この作業で手は煤だらけとなります。

「これいや〜、手が黒くなっちゃったよ〜。」

次に食パンの使い方を教えます。

「お腹すいた〜、食パン食べたいいい〜!」

うん、ごく自然な反応だと思います。

その後、木炭を紙にのせていく工程や、モチーフとなる対象を捉え描いていく工程など、こども達にとって初めてな体験ばかりでしたが、それぞれのペースで、粘り強く頑張っていました。

本人達が納得できるまで、1枚のデッサンを描くことをサポートし、その後は数回、モチーフや画材を変えてデッサンを行いました。

。。。

さて、デッサンを選択しているこども達はどうなったか。

クラスにやってくる時の顔が、なんだかあんまり楽しそうな顔をしていません。そのうちに、クラスをお休みするようになりました。

お家の方と話し合い、通常の課題を行うクラスに戻ることになりました。私のデッサン指導法が、馴染めなかったようです。

ごめんね。

「絵を描く」にも、様々なスタイルやジャンルに分かれています。一般に言われる、「デッサン」は描写の技術を、意識的に構築していくプロセスを持ちます。

一方で、「ドローイング」と呼ばれる手法は、表現者によるそのままの感性など、内面的な描写を行うことに主眼を置いています。

それは、無意識に近い行為です。

こども達の成長にはステージがありますので、一概には言えないのですが。どちらのスタイルに親和性があるのか、丁寧に観ていくことが必要ですね。


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